Women engagementJanatの女性支援

Rising Women Interview

豆腐屋あこさん

環境を変えることで、
ダメな部分だと
思っていた部分が
長所だと気付くことが出来ました。

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自己紹介をお願いします

1981年生まれです。22歳から豆腐の引き売りを始めて約15年目になります。
小学校5年生のころいじめにあってしまって、声と喋り方を馬鹿にされました。
容姿を侮辱されたり、ぶりっこって罵られたり。
そのせいで学校に行きたくないと強く思うようになりました。
両親にも本当は話を聞いてもらいたかったんですけど、どう切り出したらいいのか分からなくて、絶対に言ってはいけない言葉をぶつけたり、とにかく辛く当たってしまうこともありました。 両親もきっと私への声のかけ方を悩んでいたと思います。
でも、学校には行きなさいと外に出されて・・・。
行きたくない感情は高まるばかりでしたが、それでも行かないと怒られるので、いじめにあうのを分かっていながら学校へ毎日歩くんですよね。
そんな状況で、どんどん人と目を合わすことができなくなっていきました。
それでも、そんな状況になっても、私は私らしく生きたい! という思いは捨てきれませんでした。
なので、こんな私だからこそできる仕事をしたい! と、そう強く思うようになりました。

現在のお仕事や取り組んでいること・経緯を教えてください

image過去の経験を経て自分ならではの仕事をしたいと考えた私は、この声を活かして声優になろうと思ったり、お洋服が好きだったのでデザイナーになろうと思ったりしました。ですが、どれも長くは続きませんでした。
温もりのある、私らしい仕事ってなんだろう…?
そんなことを考えては、現状の自分とのギャップに苦しむ日々。
求人サイトを見て、「いったい何が自分に合うのだろう…」と答えのない問いかけを自分にし続けていました。
そして23歳のとき、ついに転機が訪れました。
その日、フリーペーパーを読んでいたら、ふと「腕よりも、心で販売できる人募集」という求人が目に飛び込んできました。
「リアカーを引いて街へ出て、人の温もりのある仕事をしてみませんか?」という触れ込みを読んで、これだ!と思いました。
街へでてみると、最初は声をかけるのが怖くてためらっていましたが、リアカーの豆腐屋の物珍しさや懐かしさもあってか、おじいちゃんおばあちゃんが「がんばってるね」「えらいね」と私のことを褒めてくれたんです。
最初はどうやって多く売るかばかり考えていましたが、”売る”という行為ただそれだけよりも、この人がもっと喜んでくれるためにはどうしたらいいんだろうと考えるようになりました。
毎週、同じ曜日に同じルートを通るので、次第に私を待ってくれる方が増えていきました。
人の役に立てる喜び、自分を認めることができる喜びを感じられて、本当にこの仕事を誇らしく思えるようになりました。

24時間のタイムスケジュールを教えてください

週5日、月火木金土に都内で引き売りをしています。お昼くらいから19時頃までです。
晴れの日、雨の日、どんな日でも、いつも同じ場所を回って、待ってくれている大好きな人たちに会いにいくことが私の日課です。

お仕事やご活動を通じて感じたやりがい、大変だったことや苦労したことを教えてください。

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やりがいと聞かれて、まず最初になんでこれまで何も続かなかった私が、この豆腐の引き売りの仕事は続けてこられたのかを考えてみました。
色々考えた中で一番大きかったのは、私が求めていたのは心の拠り所だったんだなって。
真夏には一緒にアイスを食べようと言ってくれるおばあちゃんがいたり、真冬にはホッカイロをいつも渡してくれるおじいちゃんがいたり。
私はただ必死にリアカーを引いているんじゃなくて、家族のようなお客さん達と触れ合えるぬくもりのある心の居場所がたくさんあったんだなと思いました。
おじいちゃん、おばあちゃん達にも、私の存在を通して居場所を作ってあげられているのかなと思うと、それがやりがいだと思います。

あなたにとっての心安らぐ瞬間、
また生き生きと自分らしくいられると感じる瞬間はどんな時ですか?

老若男女、みなさんと楽しくお話しているときです。思い出話を聞いたり、お互い顔を見るだけでほっとします。
何でもないような時間だけど、大切な時間で、「60歳の時はあこさんとお友達になれたから幸せだった」、「70歳になったらバードウォッチングをして、たくさん散歩をするんだ」なんてお話を聞くだけで、温かい気持ちになりますし、もっとお話を聞きたいと思え、心が安らぐ時間だなと思います。

お仕事、ご活動をされる中でのポリシーや座右の銘を教えてください。

笑顔を大切にしています。何があっても常に前向きに。毎日人と触れ合っていく中で、幸せに対してのハードルが低くなりました。以前おばあちゃんと道端で話していたら、「今って本当に幸せよね。私が小さかったころ、防空壕で寒くて臭くて食べ物もない中、爆弾がいつ落ちてくるか分からない状況で寝ていたから、寝た気がしなかったわ。でも今は爆弾が落ちてくる心配はないし、家に帰れば温かい布団があるもの。本当に幸せなことよね。」
って、ボソッと言うんですよね。私にとっての当たり前は、全然当たり前なんかじゃなくて、普通に寝ることだって震災のときはままならなかったし、今の当たり前が、本当に幸せなことなんだなあと物事を前向きに捉えられるようになりました。

日本の女性が活躍するために必要だと思うことを教えてください。

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私は今まで声や喋り方、マイペースな性格を欠点、コンプレックスに感じてきましたが、環境を変えただけで、この声をみんながかわいいと言ってくれたり、マイペースでゆっくりだからこそ日々小さな変化に気づくことができたり、喋ることが苦手だったからこそ人の話を聞くのが好きになりました。
だからこそみなさんが毎週心待ちにしてくれるようになったのかななんて思っています。
思い返してみたら、これまでたくさん自分が傷ついてきたからダメな人間だと思い込んできましたが、環境を変えることで、ダメな部分だと思っていた部分が長所だと気付くことが出来たので、悩んでいる人は環境だったり、考え方を少し何かを変えてみるだけで道が開けることがあると思います。

数年後どんな自分になっていたいですか?

引き売りが忙しくても、現在力を入れている講演活動はもっともっとやっていきたいですね。特に、いじめをなくすことには注力していきたいです。まさか自分がこんなに大人になるまでコンプレックスを引きずっていくとは思わなかったし、嫌だったことに蓋をして、そうやって過去を見ないようにしてきたというのが本音なんです。それに気がつけたのは、ある女性講演会で2016年にありがたいことにグランプリをいただいたのですが、その機会を通して自分と深く向き合えたことがきっかけでした。この経験を通して学んだことを伝えて、誰かの勇気や希望になれたらなって今は思っています。大切なことを教えてくれたおじいちゃんおばあちゃんの言葉を、小さい子たちにも私の言葉で伝えていきたいです。

JANATの紅茶を飲んでみた感想とすべての女性に対するメッセージやエールの言葉をお願いします

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ほっとする匂いとお味ですね。
リアカーを引いて疲れたとき、一息つきたいときに飲みたいです。あなたはあなたのままで素晴らしい。何者にもなろうとしなくて大丈夫。今のコンプレックスを変えようとしなくていい。そのままで十分素晴らしい存在なんだよ、ということを伝えたいと思います。